「原因不明」で放置される漏水リスクと、築古難現場におけるプロの調査アプローチ
日々の物件管理業務、誠にお疲れ様です 株式会社北條設備工業所です。
数多くの物件を統括し、理事会との調整、住民様からの要望対応、そして突発的な設備トラブル対応と、最前線で指揮を執られている管理担当者様の激務には、心より敬意を表します。
特に、貴社が管理されている物件の中でも、築30年、40年を超えた高経年マンションにおける設備トラブル、とりわけ「漏水事故」は、ご担当者様の時間と精神を最も摩耗させる事案ではないでしょうか。
私たちは給排水設備工事の専門家として、数多くの難現場と対峙してきました。その経験の中で痛感しているのは、優秀な管理担当者様ほど、現場に対してシビアな視点と、強い危機感をお持ちであるということです。
その危機感の根源にあるのは、「原因不明」という曖昧な報告を、そのまま放置することのリスクです。
本稿では、一般的な調査では原因特定に至らなかった築古物件の漏水事例を基に、なぜ「見つからない」現場が存在するのか、そしてプロフェッショナルはどのようにその壁を突破するのかを論じます。単なる技術紹介にとどまらず、理事会への説明責任を果たし、物件の資産価値を守るための「戦略的な修繕アプローチ」としてお読みいただければ幸いです。
第一章:なぜ、「普通の調査」では見つからない現場が存在するのか
管理担当者様であれば、「漏水調査=音聴調査」というイメージを強くお持ちかと思います。確かに、音聴棒や電子音聴器を用いて漏水音を探知する手法は、現在でも第一次スクリーニングとして有効です。
しかし、私たちが対峙する難現場の多くは、この**「音聴調査の限界」を超えた領域**に存在します。ここに、経験の浅い業者や、画一的なマニュアル対応しかできない業者が陥る罠があります。
なぜ、漏水しているにも関わらず「音が聞こえない」事態が起こるのでしょうか。主な要因は以下の3点に集約されます。
1. 漏水量の微小性と発生メカニズム
当然ながら、漏水量が多ければ噴出音や衝撃音は大きくなります。しかし、初期段階のピンホール(針で突いたような微細な穴)からの漏水は、水が「滲み出る」程度であることが少なくありません。この場合、音聴器で拾えるレベルの音圧が発生しないのです。 「下の階の天井にシミができたが、ポタポタとは落ちてこない」といったケースは、この微小漏水の可能性が高く、音による探知を困難にします。
2. 配管の埋設環境と材質による音の減衰
音が伝わる媒体も重要です。例えば、コンクリートスラブ(床版)の深層部に埋設された配管や、厚い保温材・防音材が巻かれた配管の場合、漏水音は地表(床面や壁面)に到達するまでに著しく減衰します。 特に、築古物件で多用されている被覆銅管は、被覆材の中で漏水が広がるため音がこもりやすく、特定を難しくする要因となります。
3. 環境ノイズによるマスキング
マンションという集合住宅の特性上、日中は生活音、夜間は静寂の中での微細な環境音が存在します。都市部の物件であれば、外部の交通騒音も無視できません。これらのノイズが、ただでさえ微細な漏水音をかき消してしまう(マスキング効果)のです。
これらを考慮せず、「音聴棒を当てて音がしないから異常なし(あるいは防水層の不具合と推測)」と結論づけるのは、プロの仕事とは言えません。「音が聞こえない=漏水していない」ではないのです。この認識の齟齬が、対応の遅れと二次被害拡大の温床となっています。
第二章:【実例検証】築40年・図面不在の難現場をどう攻略したか
我々が直面した、ある象徴的な事例をご紹介します。 「原因不明」の壁を、科学的アプローチで突破したケースです。
【対象物件概要と発生状況】
・都内某所、築40年超の分譲マンション。
・下階居室のクローゼット天井付近に漏水ジミが発生。
・管理会社様の手配で協力業者2社が調査を実施するも、音聴調査では給水・給湯ともに異常音を確認できず。「原因不明、様子見」との報告。
・対象住戸は過去に複数回リフォームされており、信頼できる竣工図面は現存せず。配管経路は不明瞭な状態。
住民様の不安は限界に達し、理事会からも早期解決の強い圧力がかかる中、当社へご相談をいただきました。
【当社の初期分析と戦略策定】
現場状況(微量な漏水、音聴調査での未検知、複雑な埋設環境)から、我々は即座に「音に頼る調査手法」に見切りをつけました。ここで漫然と同じ調査を繰り返すことは、お客様の時間と費用の浪費でしかありません。
我々が選択したアプローチは、**「トレーサーガス式漏水調査」**です。
これは、対象の配管系統に安全な非可燃性ガス(窒素95%+水素5%の混合ガス)を充填・加圧し、漏水箇所から漏れ出てくる極微量の水素ガスを、専用の高性能半導体センサーで検知する手法です。
この手法を採用した技術的根拠は以下の通りです。
1.音響条件からの解放: ガスは音ではありません。漏水量の多寡や周囲の騒音環境に一切影響を受けず、物理的に漏洩箇所から必ず噴出します。
2.高い透過性と指向性: 水素ガスは地球上で最も軽い分子であり、コンクリートや土壌、断熱材などを透過して真上に上昇する性質があります。これにより、埋設配管であっても地表から高感度に検知可能です。
3.ピンポイント特定の実現: ガス反応が最も強い地点の直下が漏水点となります。これにより、広範囲の床や壁を解体する「破壊調査」のリスクを最小限に抑え、修繕コストと工期の圧縮が可能になります。

【調査プロセスと結果】
まず、量水器(水道メーター)周りから給湯管系統にトレーサーガスを注入。圧力をかけながら、想定される配管ルート(図面がないため、建物の構造からプロの知見で推測)の床上を、センサーで慎重にスキャンしていきました。
調査開始から約2時間後。 洗面脱衣所の床面、既存の点検口から離れた位置で、検知器が急激な数値上昇を示しました。周囲をさらに詳細に探査し、ガス濃度がピークになる一点を特定。
「この直下である」と断定し、管理担当者様の許可を得て床を部分開口しました。コンクリートをはつり、現れた埋設給湯管(被覆銅管)のエルボ(曲がり角)付近を確認したところ、推測通り、経年劣化によるピンホールからの漏水を目視で確認いたしました。
その場で修繕を行い、耐圧試験を実施して漏れが止まったことを確認。長期間にわたる「原因不明」のトラブルは、わずか半日の調査で収束に至りました。
第三章:管理担当者の視点~理事会へどう説明し、合意を得るか~
今回の事例は、適切な初期対応と技術選定さえ行われていれば、早期に解決できていた事案です。
しかし、管理担当者様の立場としては、もう一つの大きなハードルがあることを我々は理解しています。それは**「理事会への説明と合意形成」**です。
トレーサーガス調査のような特殊調査は、一般的な音聴調査と比較して、どうしても初期費用が高額になります。修繕積立金の支出に慎重な理事会に対し、どのようにその必要性を説明し、承認を得るか。これは高度な折衝能力が求められる場面です。
我々が担当者様に提案するロジックは、**「コスト」ではなく「将来リスクを回避するための投資」**という視点への転換です。
「とりあえずの調査」を繰り返すコスト: 安価な調査を複数回行い、都度対応に追われる人件費、住民様の不満増大による見えない損失。
放置リスクによる甚大な被害: 漏水が継続することで躯体(コンクリートや鉄筋)が劣化し、建物の寿命を縮めるリスク。カビ発生による健康被害リスク。これらが顕在化した際の修繕費用は、調査費の比ではありません。
確実な特定による総工費の圧縮: ピンポイントで特定できれば、復旧工事の範囲を最小限に留められます。「どこが漏れているか分からないから、洗面所の床を全て剥がす」といった無駄な工事費を削減できます。
「多少費用がかかっても、一発で原因を特定し、最小限の工事で確実に止めることが、結果として最も組合様の利益になる」というストーリーを、我々は調査報告書という形で強力にサポートします。
我々の提出する報告書は、単なる結果報告ではありません。検知時の数値データ、現場写真、図面へのプロットなど、理事が納得せざるを得ない客観的な証拠を網羅します。担当者様がそのまま理事会資料として提出できるレベルのアウトプットをお約束します。
難現場こそ、プロの領域
築年数を経たマンションの設備管理は、今後ますます難易度を増していきます。図面通りではない現場、過去の不適切な修繕による迷宮化した配管、そして老朽化による複合的なトラブル。
これらに対応するには、従来の経験と勘だけに頼る手法では限界があります。科学的なアプローチと、最新のテクノロジーを駆使できる専門家の存在が不可欠です。
他社様がさじを投げた現場、原因不明で長期間放置されている現場、図面がなく誰もやりたがらない現場。そうした「難現場」こそ、我々北條設備工業所の主戦場です。
貴社が抱える解決困難な課題に対し、プロとして確実な「解」をご提示することをお約束いたします。お困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。

